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OEKのヨーロッパ・ツアー2013キール公演

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭2013への出演、2日目のキール公演は大成功となりました(会場:シュロス)。

シュロスというから、てっきりお城の中で演奏するのだろうと思っていたら、ヨーロッパらしい歴史あるホールでした。昔お城の場所だったからシュロス。収容人員は1200席、ここでも満席でした。

(写真はリハーサル)
キール

エルムスホルンの公演は良かったのですが、やはりツアー初日だったこともあり、最初の森山智宏作品がちょっと守りの演奏だったと思います。キールでは、そうした固さもなく、自由なスピリットにあふれていました。

とにかくティンパニの菅原淳が最初から突き抜けていたものだから、それにみんなが反応して、それぞれが丁々発止の演奏に。

現代音楽というと、なんとなくスクエアできっちりした演奏をイメージしがちですが、とても生き生きとした音楽でした。

演奏後の聴衆の反応もとても良かった。私は休憩時間や終演後に森山氏とご一緒していたのですが、たくさんの人が彼に曲の感想を伝えに来ていました。日本では聴衆に話しかけられることはまずないそうで、そのフランクに楽しんでいる姿に彼は感激していました。

私は横で地元の聴衆が話すのを聞いていたのですが、ドイツの人たちは、日本の若い作曲家がどういうことを考えて作曲しているのかとか、あなたのオリジナルの音楽は何かということに興味を持って聴いている。ベートーヴェンなどの演奏が素晴らしいというのは、もちろん評価されるのだけれど、それだけではなく、自分たちと違うものは何なのかを探りながら聴いているし、そうした違いがあることを期待しているように感じました。

そういう点で、今回のプログラムはヨーロッパの作品を魅力ある演奏で届けることと、自分たちの声を主張することの両面を見せることができていて、うまく行ったと思います。

コンサートの話に戻って、前半続いては、ミッシャ・マイスキーの登場。

今日もマイスキー・ワールド全開でした。エルムスホルンと違ったのは、ロココの主題による変奏曲のとき着替えて出てきたシャツが、青ではなくシルバーだったこと(カデンツァも違ったような気がしましたが、確信もてず)と、スタンディング・オベーションだったこと。そして、オーケストラ伴奏のアンコールの後にもう1曲、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュードを演奏したこと。プレリュードはすごく速いテンポで、独特の語り口でした。

コンサート前半が盛り上がったため、よい雰囲気のまま後半のベートーヴェンの交響曲第2番へ。

山田和樹はエルムスホルンのときと特に音楽を変えたりはせず、きっちりと今回つくり上げてきたものを披露するという姿勢。

オーケストラはノリノリで演奏していました。4楽章の入りが、リハーサルを含めて今回聴いてきた中で一番決まった。実は今ひとつタイミングが決まっていないように感じていたので、今日やっとスカッとしました。

曲が終わったとき、大きな拍手と声援が広がりました。特に舞台後ろ側のカテゴリーのお客さんの反応が大きかった。どこでもあの席には、筋金入りの音楽好きが座っているのだなと思いました。

アンコールではやはり、武満の《3つの映画音楽》よりワルツがとても受けてスタンディングオベーションに。

キールで公演するのはこれで3度目だそうですが、人口24万人の都市で音楽コミュニティがしっかりと根付いているのでしょう。毎回とてもお客さんの反応が温かく、喜んでくれるそう。

 

休憩時間の聴衆。ここも平均年齢高し。

聴衆

なんと終演後は無料で飲み物(ワイン、ビール、お水)がふるまわれ、聴衆が歓談して過ごすのでした。

キールは港町。ホールのすぐ横にはクルーズ船のターミナルが並んでいます。写真はMSCムジカ。キール発着で、ストックホルム、サンクトペテルブルク、コペンハーゲンを周遊。イマドキの海に近い観光地は、クルーズ船用の最新設備をそなえたターミナルが必要不可欠な施設なのでしょう。

クルーズ船

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OEKのシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭出演は大きな成功を収めて終了。山田和樹とのコンサートはもっと聴きたい!と思わせるものだったので、とても名残惜しいのですが、オーケストラは次のツアー地であるエストニアへ。

今回ドイツへ来て思ったことは、ここのところ専ら新興国が発展するダイナミズムに魅力を感じていて、旧先進国は行きつくところまで行きついていてもう何も出てこないような気になっていたのですが、成熟した国の底力はすごいということ。インフラが整っていて、きちんとオーガナイズされているのはもちろん、いろんなデザインがハイレベルだし、文化的なものにエネルギーが注がれていて、それを楽しんでいる人々の姿がとても自然。成熟した国がこれからさらにどう進むのかということも、非常に面白くて挑戦しがいのあることなのだと再認識しました。

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